連載空想科学小説
大便人ワンセブン

(作 : エクソダス) 

第一話

国際便所研究会の科学事務所で働いていた電子頭脳「ブリイン」がある日突然暴走した。ブリインは研究所内部や周辺の建物に手当たり次第に糞を投げつけ始めた。

保健所職員が乗り込んだ時にはすでにブリインの姿はなかった。また、ブリインの製作者であるヘスラー教授がその日から行方不明になった。

一年後。

近所で名高い糞餓鬼の三漏は、山の中で道に迷っているうちに怪しい洞窟を見つけた。中に入るとそこには数十メートルはあろうかという巨大な巻き糞があった。

見ていて思わず便意を催した三漏は近くにちょうどいい穴を見つけ、思いっきり脱糞した。すると、なんと巨大な巻き糞がものすごい音を立てて動きだしたのだ。

そこへ慌てた様子で男が走ってきた。それはヘスラー教授だった。

「糞っ!ワンセブンを起こしてしまったぞ!」

そして巨大な巻き糞は変形を始め、巨大なロボットになった。このロボットはヘスラー教授が自らの野望のために作った破壊兵器だった。十七番目に作られたため、ワンセブンと呼ばれていた。

すでに99%完成していて、あとは主人を覚えさせるため記憶装置に自らの糞を入れるだけだったのだが運悪く便秘になってしまい、そこへ三漏が登場したという次第だった。ヘスラー教授は大慌てで屁をこきながら逃げていった。

やがて、ワンセブンは静かに三漏に手を差し伸べたが、三漏は怯えて失禁しながら(糞は出したばかりで出なかった)その場を逃げだしたのだった。

第二話

逃げ出した三漏はやがて国際便所研究会の本部に保護された。三漏が山の中の洞窟で見たことを話している最中に、突然非常事態を告げる警報が鳴り響いた。

どこからともなく巨大なバキュームカーが突然現れ、糞尿を撒き散らしながら立ちふさがるもの全てを轢き潰して回っているというのだ。ヘスラー教授の差し金であることは言うまでもない。

すでに自衛隊までも出動していたが、装甲が堅くまるで太刀打ちできなかった。

やがて、バキュームカーは三漏のいる国際便所研究会本部の方に近づいてきた。

三漏達は必死にバキュームカーに糞や便器を投げつけたが、そんなもの効果があるわけもない。とうとう本部ごと三漏達がバキュームカーの下敷きにされようとしたその時だった。

屁のような音色の電子音が響き渡ると同時に、地面から巨大な巻き糞が現れてバキュームカーを後ろに押し戻した。

それはワンセブンだった。

ワンセブンは三漏に微笑みかけるように再び屁のような電子音を響かせた。そして、いきなりバキュームカーに向けて尻を突き出した。

尻の発射口から凄まじい量の下痢便が発射された。バキュームカーはみるみるうちに押し潰され、破壊されてしまった。ワンセブンの必殺技『ゲリヴィトン』である。

こうしてバキュームカーによる被害は食い止められたものの、ワンセブンが放った下痢便による被害も同じぐらい大きかったという。

第三話

巨大バキュームカーを破壊したワンセブンは三漏に近づくと、尻の穴から和式便器を取り出して三漏の頭に乗せようとした。

それはワンセブンをコントロールするためのヘルメットだったのだが、三漏がどうしてもかぶるのを拒否するので、しかたなくワンセブンは三漏をつまみ上げ、尻の中に押し込んだ。

ワンセブンの体内の尻の部分は操縦室になっていた。洋式便器型の操縦席にゆっくりと下ろされた三漏。

「俺が…ワンセブンを操縦するのか?」

その頃、ヘスラー教授は怒りで屁を放ちながら電子頭脳ブリインに当り散らしていた。

「Shit!ブリイン!お前の作り出したバキュームカーは失敗したぞ!」

「原因ハ、教授ガワンセブンヲ奪ワレタコトニアリマス」

冷静に答えるブリイン。

「Shit!便秘にさえならなければ!しかもまだ治っておらんのだ!ブリイン、何とかしろ!」

ブリインは手早く一つの小さな浣腸液を作り出すとヘスラーに渡した。

「トテモ強力デスカラ、使エバ五秒モカカラズニ通ジルデショウ」

ヘスラー教授はさっそく浣腸液を持って便所に向かった。たちまち便所から糞臭と共に喜びの声が漏れ始める。

だが、それっきりヘスラー教授は二度と便所から出てこなかった。浣腸液が強力すぎて下痢になり、そのまま衰弱死したのである。

第四話

ヘスラー教授を葬り去ったブリインは、自らの計画を実行に移そうとしていた。それは世界中の便所を汚す存在を消し去ること…つまり世界中の人類を抹殺することである。ブリインは自らを戦闘機械へと改造し、実行の日に向けて着々と準備を進めていった。

そして…実行の日が訪れた。

三漏は山奥で密かにワンセブンの操縦の練習をしていて、ちょっと休憩してワンセブン内の便所で脱糞中だった。そこへ突然ワンセブンが街の方に向かって全力噴射で飛び立ったものだから、三漏は尻を出したまま便所から転がり出てしまった。

何事かと思って外を見ると、街の真ん中に巨大な洋式便器がそびえ立っていた。呆然と見ているうちに、便器の蓋が開いて、中から小さな便器の形をした爆弾が大量に飛び出して街を破壊し始めた。

「何なんだあれは!?」

操縦席に着いた三漏が叫ぶと、それに答えるかのように巨大便器から大音響で電子音声が響き始めた。

「私ハブリイン…私ノ使命ハ…便所ヲ汚ス存在デアル人類ヲ抹殺スルコト」

 

「行くぞ!ワンセブン!」

話が通じる相手でないことは明らかなので、三漏は直ちに攻撃に移った。

「ワンセブン!ゲリヴィトンだ!」

ワンセブンはブリインに向けて尻を突き出した。尻の発射口から凄まじい量の下痢便が発射される。…だが、ブリインは平然と蓋を開けると、中に下痢便をいとも簡単に全部吸い込んでしまった。

次の瞬間、ブリインは大量のトイレットペーパーを吐き出し、ワンセブンをがんじがらめに縛り上げてしまった。

第五話

完全に動きを封じられたワンセブン。

「ワンセブン、破壊サレル前ニ私ノ活動の一部ヲ見届ケルガイイ」

ブリインはそう言うと、悠々と破壊を再開した。

「糞おおおおっ!ワンセブン!動け!動いてくれ!」

操縦席の三漏は懸命に振りほどこうと気張ったが、先ほど出し残した糞が出るばかり。数分もかからずに都市は消滅し、見渡す限りの焼け野原となった。

作業を完了したブリインは次の攻撃目標へと向かうためにゆっくりと空に舞い上がった。そして、地上のワンセブンめがけて特大の便器爆弾を投下した。

ワンセブンの頭部が消し飛び首のない無残な姿が残ったのを確認し、ブリインは飛び去った。

 

ブリインは重大なミスを犯していた。頭部を破壊したことで安心してその場を去ってしまったが、ワンセブンの、操縦席を始めとした重要な機構はほとんどが尻の側にあった。よって頭部を失っても致命的なダメージにはならなかったのである。

さらに、縛っていたトイレットペーパーが吹っ飛んでワンセブンは体の自由を取り戻してしまったのだ。

自由になったのが分かると、三漏は何の考えもなしにブリインの後を追った。

「ゲリヴィトンが効かないんじゃ…あいつを倒す方法はないのか?」

三漏が問いかけると操縦席のモニターに文字が映し出された。

『方法 一つだけある でもワンセブンにはできない』

「あるのか?どんな方法なんだ!」

『方法 このままブリインに体当たりすること 三漏も死んでしまう』

だが、すっかり焼け糞になっていた三漏は構わずその方法を選んだ。

 

追いかけるワンセブンの視界にブリインの姿が映った。予想外の事態に混乱するブリイン。

「ワンセブンガ動イテイル…理解不能…計算不能…」

もはや追突寸前となったその時だった。突然ワンセブンが操縦席に屁のような電子音を響かせた。まるで別れを告げるかのように。

そして、モニターに一行の文字が映る。

『さようなら 三漏』

それに気付いた次の瞬間、三漏は便所に突き落とされ排泄物用のカプセルに押し込まれた。

「何をするんだワンセブン!?」

糞まみれになりながら三漏が叫ぶが、お構いなしにカプセルは密閉され尻の発射口から外に撃ち出された。

三漏が脱出させられたわずか1秒後、ワンセブンはブリインに追突した。

凄まじい爆発が終わると、そこにはブリインもワンセブンも跡形すら残っていなかった。

 

こうしてブリインの野望は潰え、人類は滅亡から救われた。

さらば、大便人ワンセブン。

大便人ワンセブンの名は、人類の誰の胸にも刻み込まれることだろう。

ワンセブンは…不滅のナンバーだ!

 

 

ちなみに三漏は無事に地上に着陸したが、密閉されたカプセルの開け方が分からずそのままメタンガス中毒で死んだ。

(おわり)

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